キャラまとめ|漫画『ダンダダン』と社会に必要なセーフティネット

2024.12.20


© 龍幸伸/集英社

 筆者は『ダンダダン』(龍幸伸, 集英社, 2021.4- 連載中)の連載を毎週追っている読者の一人だ。本作のオカルト×バトル×ラブという掛け算による魅力は全力で推しているのだが、本作の登場人物が抱える人間としての苦悩あるいは社会的な〝しんどさ〟は各種の社会問題に直接つながるものばかりだ。主要登場人物の境遇について整理しておき、そのうえで社会に必要なセーフティネットについて改めて考える機会にしたいと思い、本稿をまとめることにした。

 画像は2024年12月に公開された「第1回ダンダダン キャラクター人気投票ランキング」から借用しました。


綾瀬桃(モモ)

本作の主人公にして、昔話「桃太郎」における桃太郎のような役割。桃太郎は猿雉犬をお供としつつ、本人も知勇優れる武闘派に思う。だが社会的な視点で見れば、両親は不在。祖母の星子と生活しているが、星子が美魔女(自称)すぎて本当に祖母か疑うレベル。いずれにせよ「両親不在」という点には強い意味があり、今後の展開で真実が明かされるであろうことが期待できる。


高倉健(オカルン)

本作のもう一人の主人公だが、彼がどのような背景を抱えているのかはハッキリとは描かれておらず不明。おそらく物語の最終盤で描かれるのではないかと予想する。友達付き合いが苦手で、UFOならばということでオカルトにはまりこんでいく状況は描かれているが、オカルンの家庭環境自体はまだハッキリしない。普通の家庭のままかもしれないし、なんらかの特殊な事情を抱えているのかもしれない。


白鳥愛羅(アイラ)

幼少期に母は他界。父子家庭で育つ。「お母さんに自慢できる子になる」という、自分自身へかけた宣誓(あるいは呪いのような呪縛を自らに課したこと)によって異常な負けず嫌いの性格になったことが後々のエピソードでわかる。母の死因は不明だが病没と想像される。


ターボババア

蟹のエピソードの段階では気づきにくかったが、ターボババアが奔走する理由が、男から乱暴されて非業の死を遂げた若い女性たちへの慰めと弔いであったことがわかる。明確には描かれていないが、男性全般を敵視しているそぶりがあり、ゆえにイチモツやキンタマを狙う。若い女性への愛情は深く、モモが酷い目にあいそうな場面には助けに訪れる(最初のセルポ星人に拘束されたときや、メルヘンカルタに拘束されたときなど)。


アクロバティックさらさら(アクさら)

本作で最初の滂沱のエピソードを披露した妖怪。何らかの事情で多額の借金を負った元バレエダンサー。娘を一人で育てつつ、複数の仕事に加えて、違法売春をしなければならないほど追い詰められる。借金撮りに暴力を振るわれ、娘も拉致された絶望の果てに飛び降りでの自死。


円城寺仁(ジジ)

本作では珍しい、両親が健在であることが明確な登場人物。登場時の両親は呪いで拘束されており、本人も邪視の影響下にあった。邪視の件以外には、特に目立った不幸を経験していない稀有な登場人物。


シャコ星人(辺新)

高額医療費を要する病児を持つ父子家庭。身を粉にして働いても報われないが、息子チキチータへの愛情は本作の良心。


坂田金太

自分には何もないという抑圧的な心理を持ち、コミュニケーションに鬱屈している十代男子。昔話「金太郎」のオマージュである。家庭環境についてはハッキリしないが、モモが「桃太郎」ならば、金太は「金太郎」であり、金太郎が相撲をとった熊はバモラや宇宙人たちということになる。


バモラ

戦災孤児。幸いにしてバモラを育てた養母バンガの生存が描かれており、感動の再会が訪れそうな伏線はあるが⋯。


佐脇凛(委員長)

ヤングケアラー。祖母の介護の関係でアイドルコンテストに出場できず、しかも自分を迎えに来た友達が交通事故で死亡するゆえに二重に悔いている。その友達(川番河舞)は妖怪オンブズマンとして復活したのち除霊され、凛のプロデューサーを自認して再登場。キレのあるコメディ役となった。


頭間雲児(ズマ)

経済的貧困にある母子家庭で育った。父は不慮の事故等で他界し、母が経済的に追い詰められていく様子が描かれる。次男(ズマの弟の風太)が川で溺死、生きていくことに絶望した母が無理心中を試みるが、ズマ一人が生き延び、保護施設で育ったのち、警官の部賀に迎えられる。

〈おわり〉